
子供の将来の職業に薬剤師なんてどうかなと思うんだけど



その選択、吉と出るか凶と出るか、よく考えないと後悔することになるかもしれません
女の子の親の「就かせたい職業」トップ10入り常連の薬剤師という職業。(参考:株式会社クラレ 女の子の親の「就かせたい職業」トップ10)
薬剤師が主役のドラマ「アンサングシンデレラ」も放送され、薬剤師の認知度も上がりました。
薬剤師にいい印象をもってくれた人も多かったようです。
「いい職業のようだから、子供にならせよう♪」というそこのアナタ!
安易にその言葉だけで、子供を薬学部に入れると後悔するかもしれません。
薬学部と薬剤師をとりまく環境を踏まえて申し上げると、薬学部に行ったほうがいい場合と、後悔する線が濃厚な場合があります。
薬学部に行ったほうがいい場合と、行かないほうがいい場合は、親の経済力と子供の学力の兼ね合いにより違ってきます。
今回は、私立薬学部に奨学金を借りて行き、現在薬剤師として働く筆者が、薬学部にいったほうがいい場合、行かないほうがいい場合、薬剤師の現実についてお話しします。
私立薬学部の学費は高い


私立薬学部の学費は高いです。
6年間で1200万円かかります。
薬学部は留年率が高いのですが、留年してしまうと、1年間の学費200万円が追加でかかります。
親としては、年度末には我が子が留年しないか、祈るような気持ちになるのではないでしょうか。
家が裕福な家庭の女子であれば、薬剤師は嫁入り道具としては最高


薬剤師はかかった学費の割には収入は高くないので、コスパが悪いと言われます。
しかし、かかった学費のことを考えなくていいのであれば、薬剤師という資格は最高の資格です。
特に嫁入り道具としては文句なく最強です。
結婚後、女性薬剤師は正社員でもパートでも働くことができます。
正社員では民間全体の男性に負けないぐらいの年収を稼ぎます。
パートであれば、時給2000円ほど稼ぐことができ、民間全体の時給の約2倍の値段で働くことができます。
また、女性が多い職種なので、産休育休がとれる職場が多いです。
よほど小さい会社で人がいないというところでもなければ、ほぼ産休育休はとれます。
出産後は時短勤務の制度が整っている会社も多いため、女性が嫁入り道具としてもつには最強の資格と言えます。


家が裕福な家庭の男子なら、もっと上を目指したほうがいい


教育費にお金をかけられる家庭の男子なら、薬学部よりもっと上を目指したほうが年収はあがります。
薬剤師は書けた学費の割には、平均年収は561.6万円と高くありません。
そのため、男の人は特に割に合わないと言われます。
教育費にお金をかけられるのであれば、同じ6年制だと医学部を目指したほうがいいです。
薬剤師は女性が多いため、男の人の職業ではないと言われることもあります。
そして、医師の指示のもとで働くことが多いので、男性薬剤師は物足りなさを感じる人もいます。
医師と薬剤師では年収も社会的地位も圧倒的に違います。
教育費を惜しみなくつかえて、医学部に入れるようなら、薬学部より断然医学部にいったほうがいいです。
しかし、「社会的地位や年収はそこそこでいい!ライフワークバランスが大事だ!」と学生の段階で思うなら、薬剤師でも十分いい職業です


お金がないと私立薬学部にいって薬剤師になれないなんてことはない


薬学部の学費は6年間で1200万円と高額です。
しかし、お金のある家庭の子しか、私立薬学部に入って薬剤師になれないかというと、そんなことはありません。
私立薬学部には、お金が厳しいという母子家庭の出身の子もいます。
私の通っていた私立薬学部でも、何人か母子家庭出身の子もいましたが、きちんと卒業し薬剤師になって働いています。
奨学金があってもきちんと結婚して家庭を持っています。


ただ、結婚前に奨学金を返しておいたほうがいいことは言うまでもありません。
全額返済はムリでも、なるべく額は減らしておきたいところです。


私も裕福な家庭の出身ではなく、奨学金を借りて大学を出ましたが、無事薬剤師になることができました。
奨学金を借りても大丈夫なのか?と不安に思うかもしれませんが、母子家庭出身の友人も私も「奨学金を返せない!どうしよう・・・。」という事態に陥ったことはありません。
大学を出て数年で繰り上げ返済で全て返し終わった友人もいます。
お金がなくても、奨学金を借りて薬学部に行くことはできます。
ただし、奨学金を借りて大学に言った場合は、絶対に薬剤師になってください。
薬剤師になれば、奨学金は返せます。


それなりの偏差値なら薬剤師はいい職業


偏差値が60を超えないという人であれば、薬剤師はそれなりにいい職業だと思います。
薬剤師は安定し、そこそこの収入があります。
薬剤師の平均年収は561.6万円です。(厚生労働省 「令和元年賃金構造基本統計調査」より)
対して、全業種の平均年収は441万円です。(国税庁 「民間給与実態統計調査(平成30年度)」より)
偏差値50台の大学出身で、これほどの安定・高収入・ホワイトな働き方の職場が多い仕事はそこまで数は多くないのではないでしょうか。
どんな条件でも偏差値が低すぎる人はやめたほうがいい


家が裕福であっても、偏差値が低すぎる人はやめたほうがいいです。
薬学部の留年率は高いです。
そして、卒業延期も。
そのため、薬学部に入り、6年間で卒業し、ストレートで国家試験に合格する人は、薬学部に入った全体の人数の6割にも満たないのです。
薬学部に入った人のうち、4割の人が6年間で薬剤師になれないのです。
そして、その傾向は偏差値の低い大学ほど顕著にでます。


私立薬学部の偏差値は高いところで70、一番低いところで50です。(参照:全国の薬学部大学ガイドヤッカレ)
2021年の国家試験合格率をみてみると、偏差値の一番高い慶應義塾大学で81.88%で、偏差値51の徳島文理大学で51.14%、青森大学で43.94%、第一薬科大学で31.46%です。
偏差値が低くなると、国家試験合格者数は1/3から半分程度になります。
そのため、薬学部受験時に国家試験合格率の低い大学にしか入れないようであれば、「1/3から半分の合格者になってみせる!」というよっぽどの根性がない限り、入学しないほうが賢明です。
裕福な家庭の子でも、偏差値の低い大学にしか入学できないなら、薬学部入学は慎重に考えたほうがいいでしょう。
薬学部に入って、薬剤師になれなければ、高い学費がもったいないです。
奨学金を借りて大学に行く場合は、なおさら慎重に考えましょう。
無理やり入れるな!危険!





お金もあるし、それなりの薬学部に入れそうだし、子供を薬学部に入れるわ!



ちょっと待って!お子さんは入りたいと言っていますか?
薬学部に入ったからといって薬剤師になれるかは、本人のやる気次第なところがあります。
薬学部の勉強はハードです。


朝から晩まで授業と実験の日々が待っています。
テスト期間なんて1週間以上続くこともあり、全教科一夜漬けで乗り切ろうなんて通用しません。
ガチで勉強、実験、勉強の毎日です、
そんな中、自分の意志で薬学部に入ったわけでもない、勉学の天才でもない、となると薬学部は本当にキツイです。
高校生のときは勉強できていた人でさえ、留年していく世界です。
実際に筆者は、有名私立高出身の同級生たちでも、単位がとれずに留年していく姿を見ていました。
必死でやらなければ、カンタンにこぼれ落ちてしまいます。
自分の意志ではなく、なんとなく入ったとなると、入ってからこんなにキツイと思わなかった後悔することになるかもしれません。
かかった学費の割にはお金もちにはなれない


薬学部に入れたいと思ったときに知っておきたいこととして、私立薬学部はかかった学費の割には年収は高くありません。
薬剤師の平均年収は561.6万円です。(厚生労働省 「令和元年賃金構造基本統計調査」より)
一方1000人以上の大企業の30~34歳の平均年収は591.30万円です。(厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より)
私立大学出身の薬剤師は1200万円の学費をかけたわりには、大企業のサラリーマンに30才を超えた時点で年収は抜かれてしまいます。
そのため、男性薬剤師はそんなに高収入ではないという言われ方をします。


確かに、大企業を狙えるような高い偏差値の大学に入れる場合、年収だけを見れば、大企業に就職したほうがよっぽど割に合います。
収入の面だけで見れば、薬剤師はかかった学費のわりには、年収はそんなに高くありません。
そのため、薬剤師が高収入だと思って、子供に薬剤師をすすめてしまうと、将来がっかりしてしまうかもしれません。
孫の顔を見るのはだいぶ先になるかもしれない


薬学部は6年制です。
高校を卒業し、現役で大学に入って、ストレートで薬剤師になれたとしても、卒業するときには24歳になっています。
そのため、女性薬剤師の結婚年齢は遅くなる傾向があります。


そして、薬剤師女性の社会人になってからの婚活は難しいです。


結婚相手がなかなか見つからないと、結婚が30才過ぎてからになることも珍しくありません。
薬剤師は女性が多く、職場に出会いがないことが多いです。


筆者も職場に出会いがなかったため、あらゆる婚活をしました。
しかし、学生のうちに結婚相手をみつけておけば、すんなり結婚できます。
娘を薬学部に入れる場合は、学生のうちに結婚相手を見つけたほうがいいよとアドバイスをしておきましょう。
見つからなかった場合は、薬剤師と同じかそれ以上の年収の相手と結婚するなら、結婚相談所が一番の早道です。
結婚相談所へ登録したほうがいいのではないかとアドバイスしてみるのも一考です。
あまりごり押ししすぎると、嫌がられるかもしれませんので注意が必要ですが。
娘が薬学部へ言った場合は、晩婚になるかもしれないので、孫の顔をみるのは遅くなるかもしれないと覚悟しましょう。
薬剤師は高収入なゆえに、一人で生きていくこともカンタンで、趣味に熱中し結婚しない人もいます。
独身でいたほうが、わずらわしさもなく、気楽でいいと思ってしまうことも。
そのため、孫の顔を見るのが遅いどころか、見られない可能性もあります。


薬剤師の仕事は人と接する仕事


医療の現場で働く薬剤師の仕事は、人と接する仕事です。
特に調剤薬局や、ドラッグストアは接客業のようなものです。
感謝していただくことも多い仕事ですが、中には嫌な思いをすることもあります。
ことあるごとに怒鳴りつけるモンスターペイシェントだっています。
理系の勉強が得意というだけで、薬学部に入り薬剤師になった場合、人が苦手だと苦労します。
近年、薬剤師はかかりつけ薬剤師や、在宅医療、チーム医療といったことで、コミュニケーションの重要さがよく言われています。
かかりつけ薬剤師では、患者さんの相談に乗ることが求められますし、在宅医療やチーム医療は医師、看護師、ケアマネージャーなどの医療スタッフとのコミュニケーションが求められます。
人とあまり関わりたくないと思う性質の人だと、仕事が苦痛になってしまうかもしれません。


子供を薬学部に入れたほうがいい場合と入れないほうがいい場合


子供を薬学部に入れるか入れないかは、親の経済力と子供の学力によります。
親が経済力があり、私立薬学部の学費もなんら問題ないのであれば、女性は薬学部は十分かちがあります。
男性の場合は、もっと上をめざしたほうがいいです。
学力が低すぎる場合は、入れる薬学部があったとしても、薬学部に入ることはオススメしません。
薬剤師国家試験の合格率は、偏差値の低い大学ほど低くなり、半分から1/3程度の合格率になってしまいます。
そして、薬学部は留年が多く、6年間で卒業しストレートで国家試験に受かる人は薬学部全体で6割に満たないのです。
あまり低い薬学部に入学すると、「入ったけど卒業できない」とか、「入ったけど薬剤師に慣れない」という確率が上がります。
その他にも、子供を薬学部に入れる前に知っておきたいこととして、「薬学部の勉強はハードなため、本人にやる気がないと乗り越えられない」こと、「薬剤師は晩婚傾向」であること、「かけた学費の割には収入は高くない」こと、「薬剤師は人と接する仕事なので、人が苦手だとのちのちキツイかもしれない」ということです。
子供を薬剤師にしたいなら、家庭の経済力と子供の学力を考え、薬剤師という職業の現実を知ったうえで、薬学部にいれるかどうか決めましょう。